INTERVIEW

2020/01/30

人生100年時代を生き抜くために ≪前編≫

キャリアドクター
野津卓也  


今から10年前。著書 『キャリアノートで会社を辞めても一生困らない人になる(東洋経済新報社)』を出版。死ぬまでクライアントの面倒をみる主治医=キャリアドクターとして名だたる経営者をはじめ多くのビジネスパーソンに影響を与え続ける野津卓也先生。今回はスペシャルインタビューとしてキャリア界の先駆者である野津先生にお話を伺いました。

これは危険だ、会社と社員の間に意識のギャップ

 

キャリアドクターの道を歩む前、20年もの間経営コンサルタントとして企業文化の変革に携わってきた。その中で時代が変わり、業界再編により経営者の中には

“人ごと事業を売りたい”

という声も聞くようになる。一方、その会社で働く社員に話を聞くと

“ずっと定年まで会社にいれる”

と思っている人がほとんどだった。

 

経営者と社員との間に大きな意識のギャップがあることを痛感。

さらに日本は社会保障の問題も抱えており、この先若い人には年金もロクに出ないようになる。

 

「生涯現役で働かないと路頭に迷うのが目に見えている。会社に依存せず、会社を辞めても社会に通用するようなキャリアを築かないと危険だ。しかしそのようなキャリアを築くためにはどうしたものか。」

 

と思い巡らすようになった。

 

キャリア支援の道に進むも、惨敗

 

そこで、まずはCDA(現:キャリアコンサルタント)の資格を取ることにした。

 

しかし、テキストの内容では物足りない。アメリカ発の理論ばかりで、あまり使いものにならない。キャリア系の学会に出てみてもピンとこない。

 

そこでクライアントと対峙して自分なりの回答を出そう。

さらに自分の力を試すべく、どん底のリーマンショックのタイミングで20年間勤めた経営コンサルタント会社を辞め、キャリアの仕事一本に絞ることを決意。

実務経験を積むため、人材会社や大学など20社ほどに履歴書を送った。

 

しかし、結果は惨敗。どこからも採用されず、すべて落とされてしまったのだ。

 

そこで人材会社のキャリアコンサルタントに相談に行くと、担当者では決まりきったやりとりで話にならず、ついには社長が出てきて、

 

“あなたに紹介できる会社はありません。”と断られる。

 

そこでやむなくフリーランスとして独立することに。

しかし、なんの実務経験もない状況では誰からも依頼が来るわけもなく。

 

それまで多忙の日々を過ごしていたこともあり、ちょうどいい休息時間だとばかりに10時〜17時まで趣味の釣りをしながら、河川や池で本を読んで過ごす日々が1ヶ月ほど続いた。

 

そんなある日、一本の電話が鳴る。

以前お断りを食らった人材会社から連絡が来たのだ。

 

1年で1000人のクライアントと対峙

 

リーマンショックにより失業者が増加。大阪市が期限付きの緊急就労センターを立ち上げることになったので、そこでキャリアコンサルタントとして働かないかというオファーだった。

 

「来た来た!」と思った。

 

とにかく多くの実務経験を積むために、一緒になったベテランの相談員には休憩してもらい、受付のすぐ横に立ち来る人来る人すべてを対応。

 

すると、経営コンサルタント時代の視点も合わせた就労支援が好評となり、リピート者が続出。常に昼食時間も取れないほど5~6人待ちの状態になる。

 

受付係の人が他の相談員に促しても、野津先生が良いという相談者。

その結果、野津先生だけが予約制にて相談を受けることになる。

 

そして、一年で1000人もの相談者と対峙する中で、なぜこの人たちが失職したのかが見えてきた。

 

「失職した人のほとんどが、会社に依存、ビジョンなし、キャリアのキの字も知らない人たちだった。そこで、キャリアを築くメソッドを本にしたのが『キャリアノートで会社を辞めても一生困らない人になる』」だ。

 

 

世の中には2種類の人がいると野津先生は言います。それは、

 

キャリアリッチ予備軍 キャリア貧乏予備軍

 

<キャリアリッチとは>

環境変化に動じることなく、国や企業に振り回されることなく、自分で仕事を生み出し、社会に貢献し、収入を得ている人

 

<キャリア貧乏とは>

この先、職を失い、食うに困る可能性がある人

 

果たしてあなたはどちらだろうか?

 

≪後編≫では人生100年時代を生き抜くために必要な具体的な方法についてお届けします。

 

「自分の人生に影響を与えた」という本が見当たらないからこそ、自分が読みたい本や、人生に影響を与えられるような本を自分自身で書いたのだと思うという野津先生。先生の著書の一部をご紹介します。

キャリアドクター
野津卓也

野津卓也
Career Identity Inc.代表取締役

「PI(パーソナル・アイデンティティ)とライフキャリアを複合させた独自のキャリア3.0理論」を基に、就職・転職・再就職といった単発ではなく、「定年後も通用する普遍的・本質的なライフキャリア支援」を専門とするキャリア・ドクター。個人向け独自セッションプログラムである「ライフキャリアの核&構造化」の構築支援、セミナー・ワークショップ講師、作家(6冊を上梓)として活動している。

 また、仕事以外に楽器演奏、釣り、マウンテンバイク、登山、キャンプ、クラシックカメラによる写真撮影、演劇(劇団に所属)、陶芸、絵画、ミュージカル鑑賞、美術館・博物館・水族館巡り、海外旅行、天体観測、料理、居酒屋巡り、ガーデニングなど趣味が多いことでも知られており、自らライフキャリアを満喫している。