INTERVIEW

2020/02/06

人生100年時代を生き抜くために ≪後編≫

キャリアドクター
野津卓也  


今から10年前。著書 『キャリアノートで会社を辞めても一生困らない人になる(東洋経済新報社)』を出版。死ぬまでクライアントの面倒をみる主治医=キャリアドクターとして名だたる経営者をはじめ多くのビジネスパーソンに影響を与え続ける野津卓也先生。今回はスペシャルインタビューとして≪前編≫≪後編≫2回にわたってお届けしております。

≪前編≫はこちら
http://starry-future.com/interview/1260/人生100年時代を生き抜くために/

キャリアリッチとキャリア貧乏の二極化

 

世の中には2種類の人がいると野津先生は言います。

 

<キャリアリッチ予備軍> と<キャリア貧乏予備軍>

 

果たしてあなたはどちらだろうか?

 

<キャリアリッチとは>

 環境変化に動じることなく、国や企業に振り回されることなく、自分で仕事を生み出し、社会に貢献し、収入を得ている人

 

<特徴>

長期的で計画的である

明確なビジョンがある

社会や人のために貢献するミッションがある

知識・経験・スキルがある

アイデンティティーがある

 

 

<キャリア貧乏とは>

この先、職を失い、食うに困る可能性がある人

 

<特徴>

短期的でパッチワーク的である

ビジョンがない

給料など表面的なもので仕事を選択している

社会や人のためになっている自覚がない

キャリアや仕事について、絶えずもやもやしている

 

現代社会では、このキャリアリッチとキャリア貧乏の差が日増しに大きくなり、決定的なものになりつつある。

 

では、キャリアリッチになるにはどうしたら良いのか?

 

 

ライフキャリアに重要な3つの核

 

「キャリアリッチになるには、“ライフキャリア”を構築する必要がある。ライフキャリアとは、自分に合った、自分らしい働き方を通して、人や社会に貢献し、人や社会から必要とされ、生涯にわたって食べる心配をしなくてもすむキャリアだ。その構築には、3つの核が重要となる。」

 

それは以下の3つだ。

 

1. ミッション

ミッション=社会に果たすべき使命とは何か。

自分は何で社会の役に立ちたいのか、という視点だ。

 

「私は、人は社会や人の役に立つために生まれてきたと考えている。それは、自らの感受性や気づきによって社会をより良くする役割や義務を、それぞれ一人ひとりが持っているということだ。」

 

人間は、顔も性格も人格も価値観も才能も違う。その違う一人ひとりが、自らの気づきや問題意識をもって、社会をより良くする知恵を出したり行動することで社会が良くなっていく。

 

「しかし、日本ではみな同じように教育をされ、競争によって個性が活かされていない人が多い。自分の才能は何か、自分の才能をどう使って、社会や人の役に立ったらいいのかを考えることが重要だ。」

 

2. ビジョン

10年後、20年後どうなりたいか。

仕事だけでなく、趣味や家族とのあり方、いつまで働くかなども含めて

長期的なビジョンを描くこと。

 

「キャリアとは、自分の望む人生を実現させるためのもの。

ここに直結していなければ、キャリアとは言わない。」

 

「企業都合のキャリアではダメ。良い会社に入るのが人生の目的ではない。

キャリアを構築していく上で、その会社でビジョン実現のためにどういう専門知識・スキル・経験を身につけるかを優先すべきで、雇用形態で選ぶなんていうのはナンセンス。お金もその後だ。」

 

3. アイデンティティー

 「自分が何者か」を宣言できること。これが「アイデンティティー」である。

さらに野津先生は、アイデンティティーという概念をさらに発展させた、

PI(パーソナルアイデンティティー)という概念を提唱している。

 

PIとは、

「『自分が何者なのか』ということを、他者との比較、社会の中で位置付けることにより、明確な自己像として統一していること」と定義。

 

もっとわかりやすく言うと、あなたにとって

自分らしさ

他者との違い

オンリーワン

 

は何かということでもある。

 

どんな仕事であっても、そこに自分らしさを活かすこと、他者との違いを出すことで、その仕事を必ずオンリーワンにすることはできる。

 

これまでの人生を振り返ってみてどうだろうか。あなたのアイデンティーは何だろうか?

 

「ミッション・ビジョン・アイデンティティーは三位一体。キャリアに悩んでいる人は、この3つが腑に落ちていない。もしくは自分で決めていないから、絶えずモヤモヤと悩むのだ。」

 

 

ポータブルスキルを持て

 

そして、ライフキャリアを実践する上で重要となってくるのが“ポータブルスキル”だと言います。

 

ポータブルスキルとは、専門知識・スキル・経験を積み重ね、組み合わせることで、このやり方をやればどこにいってもやっていける応用・汎用性のあるスキルのこと。

 

例えば、英語を話せること自体はポータブルスキルではない、単なるスキル。

どうやったら英語を話せるようになったのか、その“プロセス”こそがポータブルスキルであり、非常に大切な自分だけのノウハウなのだ。

 

会社に依存している状態では、ずっと不安が付いて回り、会社にしがみつくことになる。

しかし、ポータブルスキルを持っていれば、その不安から解消されて生きることができる。

 

「もし僕が今ラーメン屋をやれと言われても、そこそこの結果は出せる。なぜなら、ポータブルスキルを持っているからだ。ポータブルスキルを持っていれば、新しいことにチャレンジすることに抵抗も不安もない。」

 

実際に野津先生は、キャリアを考えていない人たちに違う形でキャリアのことを伝えられないかと、数年前から演劇を始めた。今では劇団の座長を務め、脚本・演出までも行い、新たに小説も書いているという。

 

さらに仕事以外にも陶芸や絵や写真、ギターやマウンテンバイクなど趣味も多岐にわたり、やりたいことを全てやりながら常に新しいことにチャレンジし続けている。

昨年上演された演劇の風景

 

 

キャリア3.0の時代に

 

本の出版から10年が経った今、野津先生はどう時代を見ているのか?

 

「時代はどんどん変わっているのに、キャリアに関しての個人の意識はあまり変わっていない。

しかし、ごく一部の人は意識が変わり、自分ができることへの実現性を高めている。これからは、さらにギャップは大きくなると思う。」

 

 

そして、今は「キャリア3.0」の時代だとおっしゃいます。

 

キャリア1.0 = 定年まで働き年金暮らし

キャリア2.0 = 転職しながらさらに高いサラリーをもらう

キャリア3.0 = 自分×会社×社会の視点

 

さらにこの先には、「キャリア4.0」の時代がやってきているとも。

 

直観や引き寄せ、潜在意識などロジカルには表すことができない、インテリセンス(インテリジェンスとセンスの造語)を味方につけ、超心理学の範疇でより本質的なキャリアを考える時代がやってきている。

 

 

人生100年時代、働き方改革などが謳われているが、

みなさんのキャリアへの意識はどうだろうか。

このインタビューが改めて自分のキャリアを考えるきっかけになったらと思う。

 

 

「自分の人生に影響を与えた」という本が見当たらないからこそ、自分が読みたい本や、人生に影響を与えられるような本を自分自身で書いたのだと思うという野津先生。先生の著書の一部をご紹介します。

キャリアドクター
野津卓也

野津卓也
Career Identity Inc.代表取締役

「PI(パーソナル・アイデンティティ)とライフキャリアを複合させた独自のキャリア3.0理論」を基に、就職・転職・再就職といった単発ではなく、「定年後も通用する普遍的・本質的なライフキャリア支援」を専門とするキャリア・ドクター。個人向け独自セッションプログラムである「ライフキャリアの核&構造化」の構築支援、セミナー・ワークショップ講師、作家(6冊を上梓)として活動している。

 また、仕事以外に楽器演奏、釣り、マウンテンバイク、登山、キャンプ、クラシックカメラによる写真撮影、演劇(劇団に所属)、陶芸、絵画、ミュージカル鑑賞、美術館・博物館・水族館巡り、海外旅行、天体観測、料理、居酒屋巡り、ガーデニングなど趣味が多いことでも知られており、自らライフキャリアを満喫している。