INTERVIEW
2018/06/01
Work Design Lab代表理事/複業家
石川貴志さん
働き方が多様化する中、出版流通企業に勤めながら、一般社団法人Work Design Lab代表理事の他、地元広島の創業サポーターや福山市駅前再生協議会の委員を務めるなど、複業家というマルチな活動を通して、新しい働き方を牽引されている石川貴志さんに今回お話を伺いました。
高校2年の時、お父様が経営されていた会社が倒産、というショッキングな出来事があった。なんとか大学へ進学できたものの、身をもって不況を感じながら学生生活を過ごすことに。そして時代的にも就職氷河期という背景もあり、“日本を元気にしたい”という思いを抱きつつ、当時最も明るかったIT業界に就職。エンジニアとして社会人生活をスタートした。鋭意奮闘5年半程勤務しつつも、入社当初より抱いていた、単なるシステム開発ではない自分のアイデアを形にしたいという思いが強まったこと。また、業務を通じてプロジェクトマネジメントをする中で、人材の適材適所の重要性を感じ、その両方を実現できるリクルートエージェントに転職することにした。
転職後、新卒の就職に関する事業開発に携わったことで、“働くとは”ということを就活時期よりもっと早い段階で考える必要があるのではと感じ、それをビジネスとして社会に埋め込むことができるだろう、と教育分野への関心を持ち始める。そんな折、社外で活躍していた元上司から教育の新規事業立ち上げに参画しないか、という声が掛かり2回目の転職を決意。新たなスタートを切る。
教育の事業立ち上げまでには少し時間を要したため、先に別の事業立ち上げに参画。ところが、携わることになった新規事業が、会社の事情により始動直前に事業凍結。関係各社へのお詫び行脚が3ヶ月程続くことになった。本来やるはずだった新規事業が無くなったことで、空いた時間で新たな事業を模索する日々。そんな中、奥様から聞いたNPO支援を行っているSVP東京(ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京)の活動に参加したことが、社外の活動を始めるきっかけとなる。本業を持ちながらも、社会的な課題解決に取り組む革新的な事業に対し、情熱を持って資金提供や経営支援を行っている人々の姿は衝撃的で、未来の組織のヒントがあるのでは、とのめり込んで行く。ちょうどその年は、東日本大震災が起きた年でもあり、また第一子の誕生も重なり、社会で起きていることが他人事から自分事に変わり、社会的な活動への関心が高まったことで、本格的にSVP東京の活動に参画することとなる。そんな中で始めたのが、Work design Labの活動だ。
ワークデザインラボ、サラリーマン・イノベーターの集いでの一枚
– Work design LabのVision –
石川さんいわく、イキイキ働く大人とは、やりたいことをやっていて、お金も稼いでいる。手段は様々だとしても、どちらか一方ではなくこの両方のバランスを取れている人だと言う。しかし、「やりたいことをやりたい。でも、やりたいことがわからない」または、「やりたいことが変化する」という矛盾が存在することも確か。その矛盾を認識し、やりたいことを発見するためには、まずはやってみるしかない。やってみることで好きや嫌いを感じ、自分の中で芽生えるワクワクなどの興味開発がされていく。そういう意味で、複業は自らの意思で始め、いろんな気付きを得ることができる機会であり、現代社会における個人にとっての興味開発の役割を担っていくのでは、と石川さんは言う。
一方で、働き方というのは一人では完結しない。全部が関係性の中に晒されており、ベストな働き方というのは組織の中での関係性が重要だ。社会の中で一番多い層である会社員にフォーカスし、“志あるルール違反が新しい働き方を創造する”をキーワードに、組織と個人の関係性をリデザインしていくことが、より良い社会に繋がるのでは、そんな思いから始まり、どんどん活動の領域が広がっている。今後は複業という形態を通し、個人が組織の外と繋がり、新しい感覚や価値観を持ちつつ組織に再結合することで、組織をバージョンアップさせるヒントにならないかと探求中のようだ。
ライフデザインとは、言い換えると自分自身の人生の時間を再配分することだと思う、と石川さん。
仕事や家族にどれだけの時間を使うのか。意識を改めるだけでは、何も変わらない。まず初めに再配分する時間をつくること、ワークの時間を先に解いていくことでライフの変化に繋げられる。
時間が最大の優先事項であり、仕事においてはまず会社や上司の期待値を握って、短い時間でパフォーマンスを上げ、期待値を超えることが絶対であると。
そして、今まで分断されていた仕事と家族とそれ以外の時間を、新しいコンセプトで融合させたり繋ぎ直したりすることが今後必要になってくるのでは、と仰っていました。
また、これから複業が当たり前の世界となり、自由な働き方をする人が増えていく中で、家族というチームの経営改革が必要だ。
石川さん自身、結婚しお子さんが産まれたことで、個人戦からチーム戦に変わったことを認識し、時間の使い方や意識が変わったと言います。家族も経営チームと一緒で、家族がどこへ向かっているのか、奥様とやりたいことや思いなどを共有し、互いを理解することが、チームとして作戦を立てていくためには求められる。そんな思いの中で、今年はもっと多くの人が自由な働き方をしていくために、パートナーシップや家族のチーム力強化のための活動もやれるといいな、と考えているようです。
3人のお子さんと奥様との家族写真
これまでも様々な活動をされてきた石川さん。最後にこんな話をしてくれました。
幸せは日々の人間関係やプロセスの中にある。プロセスはビジョンのためにあると思っていたが、プロセスをよくするためにビジョンがあると思う。良いビジョンを立てると、いい仲間が集まってきて、日々のプロセスが楽しくなり、人生が楽しくなる。
まだまだ日々葛藤していると話されていましたが、ビジョンを持ちつつ日々のプロセスを楽しんでいる石川さんの姿は、まさにイキイキと働く大人の見本だなと改めて思ったのでした。
BOOK人生に影響を与えた本
1978年生まれ、三児の父。リクルートエージェント(現リクルートキャリア)の事業開発部門のマネージャーを経て現在、出版流通企業にて勤務。2012年より本業外の活動としてNPO・社会起業家に対して投資協働を行うソーシャルベンチャー・パートナーズ(SVP)東京のパートナーとしても活動。2013年にWork Design Labを設立し「働き方をリデザインする」をテーマにした対話の場づくりや、イントレプレナーコミュニティの運営、また企業や行政等と連携したプロジェクトを推進する。現在は、(公財)ひろしま産業振興機構の創業サポーターや、(独)中小機構が運営するTIP*S アンバサダーも務める。