INTERVIEW

2018/06/15

ワガママに自分のスタイルを探し求めて

フードクリエーター/ cinemanma!プロジェクト主宰
小山嶺子さん  


cinema(映画)×mamma(食事)×humanity(人間関係) を掛け合わせ、映画から連想する料理を提供するcinemanma!(シネマンマ)というプロジェクトを主宰する小山嶺子さんに今回お話を伺いました。

 

少女の夢がすべての始まりだった

子供の頃から「お店を持ちたい!」という思いを持っていた。お店を持つならお店をデザインできるようになろうと大学で建築やインテリアを学び、やるなら大好きなカフェをやろうと大学卒業後は食の専門学校に通う。カフェ好きというのでてっきり食べることも好きなのかと思ったら、専門学校に通い始めた当初は、「食べることが嫌い、食べるのが面倒くさい」と思っていたというから驚きだ。ところが、共に学ぶ仲間たちから料理には人の思いがこもっている、ということを教えてもらい次第に食べることも好きになっていく。そして、学校と並行してカフェで働く中、ご飯を食べたり、本を読んだり、おしゃべりしたり、家とも高級レストランとも違う、訪れた人が自由に過ごせるカフェという文化に益々魅了され、そんな非日常の空間をつくりたいと思い描く。

 

専門学校卒業後は、D&DEPARTMENT DINING東京本店に勤務。本当はキッチン志望だったが、人手が足りないということで接客とバリスタとしてスキルを磨くことに。店長不在という状況の中、試行錯誤しながらも食のプロが集まる場所でたくさんのことを学んだ。

そんなある日、専門学校の恩師とばったり中目黒の道端で再会をする。そして、新しくリニューアルオープンする店の店長として働かないかと誘いを受けたのだ。いつかはお店を持ちたい、そんな思いが背中を押し、知り合いもいない見知らぬ土地に一人引越し、店長としてお店を運営することになった。ところが、働き出してみると想像以上の厳しさが待ち受けていた。

 

リニューアルオープンと聞けば聞こえはいいが、実状はオーナーが借金を抱えての再スタート。すぐさま資金繰りは滞り、半年間ほぼ無給で働き続ける事態となる。しかし、念願だったお店を店長として任されると、たくさんの人から応援されて東京から出て来たため、簡単に根を上げることは出来なかった。さらに不運なことに、引越先の部屋に欠陥が見つかり、雨漏りはするは、蟻が大量に発生するはで、家に帰ってもぐっすり休むことすらできない。深夜にお店から家までの真っ暗な道のりを帰宅した後、そんな状況を自分で乗り越える唯一の方法が映画を観ることだった。映画を観ている時間だけが心配事を忘れられた。怒りや悲しみなど作品によって様々な感情が沸き上がるその体験は、心のデトックスとなる。まるで一人セラピーのようだった。

しかし、貯金も底をつき、そんな状況を続けられず、実家のある沼津に帰ることになる。

 

再出発、そして生まれた自分のスタイル

沼津に戻ってからは珈琲屋で働きながら、これからのことを考えた。そして2016年、自由大学(https://freedom-univ.com)の『お店をはじめるラボ』という講義に参加。そこで改めて、どんなお店をやりたいかとことん向き合うことになる。そして最終講義のプレゼンテーションで優勝を勝ち取ったことをきっかけに始まったのがcinemanma!(シネマンマ)の活動だ。
活動の中、レストランが移動できたらもっと豊かになるかもしれない、魅力的な人も場所もたくさんあって、一つに絞れない、そんな思いがあいまって、固定のお店を持たずに、食で人を幸せにする彼女オリジナルのスタイルになっていく。

 

初めて開催したcinemanma! 映画『ショコラ』から連想する「一夜限定レストラン」

メニュー表ではなく、ZINEを作っておもてなし。

料理に使用した世界のチョコレートとパッケージを展示して食べ比べ。

 

“映画を見た後、なぜか自分の人生がちょっと良くなった気分になることがある。
映画の中に見る人生はきっと誰かの毎日のヒントになるはず。
そして、食事でお腹を満たすだけではなく、目や感情を楽しませ、心を満たしたい。

映画にインスパイアされた料理を味わうことで、いつもの食卓が非日常的な感覚に変わり、
そんな食事の時間を通してHappyの連鎖が生まれる。“

 

そんな思いを抱きながら、今もなお試行錯誤は続いている。
cinemanma!のサイトには映画から連想された料理とエッセイが掲載

https://cinemanma.com

今後は、エッセイ本の出版やショートフィルムを製作したり、メディアを立ち上げイベントなども開催したいと、まだまだやりたいことは盛り沢山だ。

最後に彼女はこんなことを言っていた。
『遊び疲れた子供が寝就くように死にたい。毎日どれだけ楽しく生きようか♪』

 

<告知>

⭐6月21日、23日の二日間限定!

石川県白山市にあるカフェで出張cinemanma!
石川と静岡の食材を使用した特別なディナーをお楽しみください。
https://www.facebook.com/events/380342859114061/?ti=icl

 

⭐小山さん自身が自分にしかできないワークスタイルを探し求める日々を綴ったエッセイ

http://ordinary.co.jp/tools/16640/

フードクリエーター/ cinemanma!プロジェクト主宰
小山嶺子さん

こやまみねこ
1989年6月2日、静岡生まれ。東京都の飲食店でバリスタ・カフェ運営を修行後、神奈川県に拠点を移すも運悪く半年間ほぼ無給で働き続けるという過酷な労働条件でカフェの料理長兼店長を務めた。苦しい修行がヒントと経験になり静岡県を拠点にフードクリエイターとして活動を開始。創業支援家と名乗るコワーキングスペースの大家さんと出会い、地元のコワーキングスペースに入居し、映画から連想する料理のcinemanma! と題したプロジェクトを本格化。お店は持たずに出張料理やイベント企画をし、映画の登場人物の感情や台詞から思い起こす料理を提供している。映画から生きるヒントを学ぶcinemanma!の料理エッセイをブログで執筆中。